「誰に」「何を」「どうやって」自社商品・サービスの魅力を伝えるか『訴求』を決めた後は、いよいよ検証です。本コラムでは、メルマガを利用して『訴求』をABテストする方法を、「配信タイミング」「オファー」「件名」に特化してお伝えします。
【目次】
1.ABテストの対象
2.優先テーマと見るべき指標
3.実践方法①:配信タイミング
4.実践方法②:オファー
5.実践方法③:件名
6.まとめ
1.ABテストの対象
メルマガは、投資効率が最も高いABテストの検証テーマの1つです。
ただし、闇雲に一斉配信を続けていると、やがて受信者によって「迷惑フォルダ」へと分類されてしまいます。
● ABテストの対象(例)
・本文中
└ デザイン
― 画像重視(HTML) vs.テキスト重視
└ 文字
― 多い vs. 少ない
― 色、大きさ
└ 画像
― 使う vs. 使わない
― 大きさ、数、配置
└ URL
― 単一 vs. 複数
― 順番、配置箇所
・本文以外
└ 配信タイミング
― 曜日、時間帯
― 時期、季節
― メルマガ登録・商品購入後からの期間
― 頻度
└ 差出人名
― 個人名使う vs. 使わない
― 社名使う vs. 使わない
└ 件名
― 相手の名前入れる vs. 入れない
― オファー(インセンティブ)付ける vs. 付けない
― 商品・サービス名入れる vs. 入れない
― 数字使う vs. 使わない
― 表記:30%OFF vs. 3割引、本日まで vs. 明日まで
└ 配信相手
― 1回購入のみ vs. リピーター
― 商品A購入者 vs. 商品B購入者
一般的に「取り組みやすそう!」と思われがちなメルマガですが、実はこれだけ多くのテスト対象があります。
どうせなら、「成果」へのインパクトが高い要素を優先してABテストを実施したいですよね?
そこで、本コラムでは、優先テーマを3つに絞って解説します。一緒に確認していきしょう。
2.優先テーマと見るべき指標
【優先テーマ】
上述のように、ABテストの対象はいくつもあるのですが、優先テーマは以下です。
1)配信タイミング
2)オファー
3)件名
理由は、上記がすべて「成果」へのインパクトが大きいからです。
加えて、「センス」「スキル」「ノウハウ」の有無などに左右されずれに、比較的シンプルな方法で検証できるのも理由の1つです。
対象顧客や取り扱い商材などによって多少の違いはありますが、基本的には上記テーマを上記順番でABテストすればOKです。
では、ここで言う「成果」とは何でしょうか?
【見るべき指標】
メルマガで見るべき指標は、以下の3つです。
1)メール開封率
2)URLクリック率
3)成約率(CVR)
ABテストの最終ゴールは「事業成長」「売上アップ」です。
「ABテストをすること自体」が主目的になってはいけません。
そのため、最も重要な指標は3の『成約率(CVR)』になります。
ただし、「成約してもらう」ためには「URLをクリックしてもらう」必要があり、
「クリックしてもらう」ためには「メールを開いてもらう」必要があります。
よって、上記3つの指標を「どれか一つ」ではなく「複合的に」見ることが重要になります。
【補足】
よく、以下のような項目も「見るべき指標」として挙げられます。
● 配信エラー率(≒メール到達率)
● 配信停止率
● ページ滞在時間
● ページ直帰率
上記はいずれも、継続的な改善により「失敗率を減らす」という意味では重要な項目ですが
「5倍~10倍の改善インパクト」を狙った場合、少し遠くなるため
売上最大化に近づくためには『成約率』『クリック率』『開封率』の3つです。
大切なことは、「指標の設定はゴールから」という視点です。
「ゴールから遠い間接的な指標」や「誤った指標」の設定・検証で“無駄な投資”をしないよう、注意しましょう。
話を戻します。
それぞれの検証テーマを具体的にどのようにテストすればよいのか、1つ1つ確認しましょう。
3.実践方法①:配信タイミング
【配信タイミングの重要性】
『配信タイミング』は、『成約率』『開封率』に大きく影響します。
一般的に、メール配信から時間が経てば経つほど『開封率』が下がると言われています。
なぜなら、せっかく送ったメールが大量に送られてくる他社のメルマガに埋もれてしまうからです。
参考までに、「メルマガ配信から成約までのタイミング」を検証した弊社クライアントの実例を挙げると、
・配信当日の成約率が「42.5%」となっており、
・2日後以内で「78.7%」
・3日後以内で「82.5%」となっています。(※下図参照)
要するに、「配信3日後まで」が勝負であり、それ以降は『開封率』以前に“メールに気づいてもらえすらしない”、という状況ですね。
そのため、「メールを開いて読んでもらえるタイミング」を狙って配信することが重要になります。
【ABテストの方法】
『配信タイミング』とは、具体的には「曜日」と「時間帯」です。
● 曜日
・週初め vs. 週末
・平日 vs. 土日祝
・月曜日 vs. 火曜日(特定の曜日)など
● 時間帯
・午前 vs. 午後
・早朝 vs. 夜間
・19時 vs. 19時半(特定の時間帯)など
「曜日」は、配信相手の生活リズムによって異なる一方で、「時間帯」には一定の傾向があります。
そのため、「時間帯」⇒「曜日」の順番で検証してみると良いでしょう。
「時間帯」をABテストする際は、以下を参考にしてみてください。
● 配信相手の属性を考慮した「時間帯」の例
・BtoB
└ ビジネスマン:7~8時(通勤途中)、13時~14時(お昼休憩)
・BtoC
└ 主婦:10~15時(家事がひと段落、夕飯準備前)
└ 学生・若者:21~23時(学校・バイト終わりの就寝前)
└ シニア層:7時~9時(朝早い時間から活動)
4.実践方法②:オファー
【オファーの重要性】
『オファー』は、『成約率』に大きく影響します。
『オファー』とは、商品・サービスとは別に、対象顧客にとってプラスになる「特典」のことを指します。
ECサイト・Webマーケティングの世界では、広告やWebサイトを見た人が、見た「瞬間」に購入することを重視します。しかし、対象顧客の脳裏に浮かぶ様々な不安や迷いが、商品・サービスを「買おう!」と決心する際のブレーキになります。
そこで、お客様に「今」買おう!と決心してもらう「背中を押す」重要な役割を担っているのが『オファー』です。
● オファーの例
・プレゼント
└ カタログ・資料
└ ギフト券
└ クーポン券
└ ポイントなど
・本商品割引
└ 数量割
└ セット割
└ 早期割
└ 定期割など
・本商品以外の割引
└ 決済手数料
└ 送料など
・セール・特売
└ 季節限定
└ 在庫入れ替え
└ 周年記念など
・トライアル・お試し
└ 初回割引・トライアル価格
└ 無料お試し期間など
・リスクヘッジ
└ 分割払い
└ 返金保証など
【ABテストの方法】
例えば、以下のような検証結果だったとします。(※下図参照)
ポイントは、「オファーなし」もテストパターンとして入れることです。
理由は「オファーあり」「オファーなし」どちらが良いのか、大枠の方針を決めることができるからです。
今回の場合、『成約率』『クリック率』『開封率』いずれも「オファーあり」の方が優秀なため、メルマガの方針としては「オファーはつけた方が良い」という判断になります。(※赤色塗りつぶし箇所)
「オファーあり」の①~④を精査してみると、以下のことがわかります。(※青色塗りつぶし箇所)
● 開封率 :
おおむね15%でバラつきがありません。
● クリック率:
②が突出して高く、その他は平均値(21.88%)を下回っています。
● 成約率 :
②が最も高く、次点で④が高く、その他は平均値(5.76%)を下回っています。
メルマガで案内する企画次第ですが、②「本商品割引」と④「セール」を使い分けがながら、より成果を高めていくのが良さそうだ、という判断になります。
補足)ABテストで出た結果の「信ぴょう性(再現性・信頼性)」の判定には、『カイ二乗検定』が役立ちます。
「CVRが良い方を採用したけど、その見解は正しいのか?」という疑問を「ロジック(統計)」で解消できます。
合わせてご覧ください。
※コラム:そのABテスト意味ないかも!カイ二乗検定で「優位性」を判断する方法をわかりやすく解説
5.実践方法③:件名
【件名の重要性】
『件名』は、『開封率』に大きく影響します。
一般社団法人日本ビジネスメール協会によると、ビジネスメールの平均受信数は「50通」を超えています。
ご自身のメールフォルダを想像していただければわかりやすいかと思いますが、
● 杉並区に住んでいるのに【渋谷区限定!】の件名ではメールを開きませんし、
● 40代男性なのに【20代女性限定!】の件名ではメールを開きません。
山積みになったフォルダから、メールを開封するか否か?判断する材料となるのが『件名』です。
【ABテストの方法】
しかし、いざ『件名』をABテストしようとすると、「入れ込む要素」と「表現方法」が多すぎて困惑するのではないでしょうか?
例えば以下のような要素があります。
● 入れ込む要素(例)
・オファー
└ プレゼント
└ 割引など
・緊急性
└ 「3日間限定」
└ 「残り10個」など
・数字的インパクト
└ 「購入者の90%が効果を実感」
└ 「販売3日で完売した話題の商品」など
・知名度
└ タレント・有名人の名前
└ 有名企業・ブランドの名前など
・呼びかけ
└ 「〇〇さまにご案内(個人名の名指し)」
└ 「○○な方にだけご案内(地域・年齢・性別・購買履歴などでセグメント)」
● 表現方法(例)
・文字数
└ 15~30文字
・言い換え
└ 50%オフ・半額
└ 〇日間限定・残り〇日
・絵文字
└ 有無
・文法
└ 平叙文(肯定文・否定文)
└ 疑問文
└ 命令文
└ 感嘆文など
・順番
└ 「入れ込む要素」の前後の順番
検討すべき要素が多いですが、『件名』よりも前に『オファー』のABテストを行ったことで、
顧客の背中を押せる『オファー』は「本商品割引」か「セール」の2択に絞られています。
つまり、「入れ込む要素」は『オファー』で固定し、あとは「表現方法」のみをABテストすれば良いのです。
仮に、最も優秀だった「本商品割引」に絞ってABテストする場合、以下のようなパターンが考えられます。
「入れ込む要素」を『オファー』で固定し、「表現方法」を「言い換え」に絞ってもこれだけのテストパターンが考えられるので、全てを検証しようとするといかにキリがないか、おわかりいただけるかと思います。
繰り返しですが、
▼ 顧客の背中を押せる『オファー』をABテストで検証したのち
▼ 『件名』でさらに精度を高める。
という流れを組むことが重要です。
『配信タイミング』⇒『オファー』⇒『件名』の順に検証し、各テーマで判明した最も優秀なテストパターンを組み合わせることで『ゴールデンパターン』が完成し、成果を最大化できます。
ぜひ実践してみてください。
6.まとめ
いかがでしたでしょうか?最後に、ポイントを整理します。
- メルマガで優先的に検証すべきテーマは『配信タイミング』⇒『オファー』⇒『件名』。
- 見るべき指標は『成約率』『クリック率』『開封率』。
- 配信タイミング:「時間帯」⇒「曜日」の順で検証する。
- オファー:「オファーなし」も検証する。
- 件名:優秀なオファーを入れ込み、「表現方法」を検証する。
以上となります。