広告レポートを見て、「ただ頷く」だけでは事業成長は実現できません。必要な事は、適切な質問を投げかけ、最低限の議論を重ねる事です。本コラムは4回シリーズの第3回です。広告運用に関する「自社のスタンス」を見つめ直す機会にして頂けると幸いです。
前回までの内容はこちらをご確認ください。
※コラム:【失敗事例】こんな広告主はヤバい①~「代理店」や「コンサル会社」に丸投げ~
※コラム:【失敗事例】こんな広告主はヤバい②~「評価指標」の設定が甘い~
【目次】
1.事例:毒入りレポート
2.【Sランク級】広告レポートを「なんとなく」眺めて終わり
3.なぜヤバいのか?「理由」と「対策」を解説!
4.終わりに
1.事例:毒入りレポート
まずは、具体的な事例を紹介します。
一定の予算規模で、複数の広告媒体に出稿する段階になると、「広告管理画面のレポート(CV数)」と「実際の受注件数」の乖離が大きくなります。
例えば、広告媒体A・Bの「各管理画面のCV数の合算値」は「885件」でした。(※下図参照)
ところが、「実際の受注件数」は、次の通り「543件」です。(※下図参照)
どうしてこのような事が発生するのか?
それは、各広告媒体が「CVの取り合い」をしているからです。
皆さんも普段の生活で様々な広告を目にするかと思います。
ある会社の広告が何度も連続して表示される事もあれば、一定期間を置いて表示されるケースなど、様々な配信方法がありますが、この状況が関係しています。
次の図は、購入者Xさんが広告媒体A・B・Cをクリックして商品を購入したケースを表したものです。(※下図参照)
Xさんは、実際には「1つ」しか商品を購入していませんが、広告媒体A・B・Cは「Xさんは、ワタシの広告で購入した!」という計測結果を出します。その結果、広告管理画面からのレポートを合算した定例会資料などでは「CV3」という合算値が報告されてしまうのです。
2.【Sランク級】広告レポートを「なんとなく」眺めて終わり
Web広告を運用していくと、前章で紹介した事例のように「広告レポートのCV数」と「実売数」が乖離してしまうのはよくある事です。
「正しくないアウトプット」そのものにも問題はありますが、
深刻なのは、代理店から提出されたレポートを「なんとなく」眺めるだけで満足し、課題解決に向けた議論が生まれない事です。
例えば、次のような状態の広告主は要注意です。
▼ 「媒体名」「キャンペーン名」「(自動で生成された)数値」が羅列された定型レポートを渡され、
▼ 「数値」を淡々と読み上げられ、
▼ 具体的な「課題」や自社が取るべき「今後のアクション」については「???」を残したまま、
▼ 前進した「気」になっている ⇒ この状態がSランク級です。
3.なぜヤバいのか?「理由」と「対策」を解説!
【なぜヤバいのか?】
誤った判断により、機会損失が発生するからです。
本来は正しくない「毒入りレポート」を「正」としてしまうと、
その延長で下した判断も、おのずと「誤った」判断になってしまいます。
細かすぎる分析は余計な業務を増やすだけですが、
代理店から提出されるレポートに、何も疑問を抱かずに「そのまま」流すのは危険です。
『木を見て森を見ず』とはよく言いますが、逆もしかりで、『森を見て木を見ず』というのも避けるべきです。
【どうすれば良いのか?①】
代理店の発信に振り回されずに、「木(細部)」と「森(全体)」を“良い塩梅”で追及する事が重要です。
“良い塩梅”というのは、「機会損失」を最小限に抑え、「効率・CV」を最大化する、両方の「中間点」です。
例えば、以下のような発信を代理店に投げかける事をおすすめします。
・誰を対象に広告を配信しているのか?
・どのような訴求をしているのか?
・それらの意図(目的)は?
・この数値は本当なのか?
・他の切り口で訴求できないのか?
少し気の利いた代理店であれば、データを整え、
「数値」や「変化」だけでなく、「課題」や「アクションプラン」も共有してくれます。
しかし、それを期待しても仕方がないので、広告主が取るべきアクションとして、
・「適切な質問」を投げかけ、
・代理店と「必要最低限の議論」を重ねる事が必要です。
【どうすれば良いのか?②】
ですが、いきなり「適切な投げかけ」をしようとすると、ハードルが高いかと思います。
別コラムでも紹介しましたが、
・「広告代理店やコンサル会社の都合に合わせない事」
・「違和感を放置しない事」が重要です。
※コラム:【失敗事例】こんな広告主はヤバい①~「代理店」や「コンサル会社」に丸投げ~
これまで、広告レポートを見てただ頷くだけだった方は、間違っても構いません。
トンチンカンな質問でも、「素人だ」とバカにされそうな内容でも構いません。
まずは、レポートを見て疑問に思った事を率直に投げかける事から始めましょう。
複雑になっている広告媒体の仕様を説明され、頭が混乱しても、わかるまで徹底して議論を積み重ねましょう。
4.終わりに
いかがでしたか?
「毒入りレポート」のように表面的には「合格」に見えても、実態は「不合格」というマーケティング施策が少なくないのがこの業界です。
このような状態が発生してしまう原因は何なのでしょうか?
道義的な責任を無視すれば、委託している外部パートナーでも、社内のマーケティング担当者でもありません。
根本的な原因は、経営者や事業部長、マーケティング責任者といった「数値報告を受ける人」。
つまり最終責任者に他なりません。
もっと言えば、指揮権を持つ管理者が「指標」と「正しい判断機能」を持たずして、組織が効果的なマーケティング活動をできるはずがないのです。
シリーズの最終回となる次のコラムでは、
広告主が持つべき「分析的な視点」を1つピックアップして、深掘りして紹介します。
事例には「前提条件・付帯条件」がある、という事をしっかりと念頭に置いて、引き続き確認していきましょう。