広告運用は代理店に任せがちです。時には丸投げという事も…。そのため、理想の結果が得られなかった際は、責任の所在を代理店に求めがちですが、この状況は健全なのでしょうか?本コラムは4回シリーズの第1回です。広告運用に関する「自社のスタンス」を見つめ直す機会にして頂けると幸いです。
【目次】
1.翻弄され続ける広告主
2.事業の一番の理解者は誰か?
3.自分軸・自分事とは?
4.事例:これって業界常識?
5.終わりに
1.翻弄され続ける広告主
「最先端のトレンドは○○…」
「大手企業(競合)の××は…」
という言葉で何となく納得してしまう空気が漂う「Webマーケティング」の世界。
自分が知らない「専門用語」や「横文字」が目の前に現れた瞬間に思考停止に陥ったり、流行りのサービスや手法による「他社事例」が取り上げられると「取り残されたくない…」という気持ちから焦りが生じたりします。
そもそも「Webマーケティング業界」は「ザワザワ」しやすい環境です。
【本質的には「新しい概念」は少ない】
少し前、「リードナーチャリング」という言葉を耳にする事が頻繁にありました。
翻訳すると、「リード=見込み顧客」「ナーチャリング=育成」なので、要するに『見込み顧客の育成』です。
考えてみましょう。
集客した見込み顧客を「データ化し」⇒「育てる」、といった一連の流れは、実は、「メールマーケティング」全盛期時代にどこの企業も実践していた「見込み顧客のメールアドレスを取得」⇒「メールマーケティングだ!」という概念と本質的には変わりません。
テクノロジーの進歩により、メール以外の手法も追加されただけで、大差は無いのです。
このように、「Webマーケティング業界」の言葉やサービスは、概念的には意外と昔から使われてきた「コト」に、ちょっとプラスされた「置き換え」が少なくありません。
“新しく見える”言葉やサービスに翻弄された結果、「ここからは専門領域!」と線引きし、実務だけでなく「戦略構築」や「各パートナー企業のマネジメント」といった“根幹部分”までをも放棄してしまう企業を、これまで数多く目にしました。
2.事業の一番の理解者は誰か?
コロナ禍に入る少し前から弊社への問い合わせで「自社のEC事業・Webマーケティングを再構築したい」という相談が増えてきました。
実際に話を聞いてみると、背景は様々で、確かにパートナー企業に恵まれなかったケースもありますが、なかには相談者(広告主)の『他人事な姿勢』が成果を得られなかった原因の一つなのでは?と感じる方もいます。
このような方が、決まって発信されるのが「依頼していた代理店はプロなのに…」という台詞です。
気持ちは分からなくもありませんが…
何よりも間違ってはいけないのは「御社の事業を一番理解しているのは誰か?」という事です。
広告代理店や制作会社といったパートナー企業はあくまでもその道のプロであり、一番の事業理解者は御社ご自身のはずです。そのため、広告主である御社ご自身が主導権を握り、各パートナー企業を上手くマネジメントする、という意識が大切です。
では、主導権を握り、パートナー企業の力を活用して最大限の成果を創出するためには「何から」着手すればよいのでしょうか?
答えは次の2点です。
1)ポイントを押さえた必要最低限の知識習得
2)自分軸・自分事であること
「全然経験がなく知識がないから…」「素人でわからないから…」という理由から、パートナー企業に言われるがまま判断・行動していてはWebマーケティングでの成果創出はあり得ません。
「1」に関しては当メディアを通して習得して頂くとして、次章では「2」について掘り下げます。
3.自分軸・自分事とは?
専門家に委託する事自体は決して悪い事ではありません。
しかし、くどいようですが、「事業を最も理解しているのはクライアントである広告主」です。
「戦略」も明確にせず「マネジメント」を放棄してしまっては、投資資金の垂れ流しと言えます。
待ち受ける未来は『この数年間は何だったのか?』という虚無の世界です。
日本人特有の優しさ(遠慮気質)のせいなのかもしれませんが、もっと「自社軸」で考えて良いはずです。
これは、「自分勝手」「好き放題」という意味ではありません。
知識や経験が無い事に引き目を感じる必要も、正解・不正解を気にする必要もありません。
自社の考えや方針・戦略などを「自分軸」「自分事」としてパートナー企業へ発信すべきだ、という事です。
具体的には、
「広告代理店やコンサル会社の都合に合わせない事」
「違和感を放置しない事」が重要になります。
業界の常識が「非常識」というケースも多々あります。
決して、得られた結果を「他責」にせずに、「放置」せずに、進行中に抱いた「違和感」にフタをせずに、一つ一つ「なぜ?」を繰り返しパートナー企業に確認する事で、原因究明・対策改善を速やかに実行できるようになります。
4.事例:これって業界常識?
これは弊社コンサルティング支援のクライアント企業から実際に相談された内容です。
本サイトのリニューアルを行うにあたり、リニューアル前の数値や、現在広告で集客しているWebページの数値も含め、「材料を集めるだけ集めて方針を立てましょう!」という会話をしていた時でした。
弊社
「広告出稿しているWebページの訪問数や購入数、購入率など、現状どのような実績なのでしょうか?」
クライアント
「それが…今の広告代理店さんが管理していて数値を見れないので、分からないんです…」
弊社
「ん!?Googleアナリティクスを導入されているのであれば、確認できますよね?どういう事ですか?」
クライアント
「それが…代理店に相談してもGoogleアナリティクスの数値を共有してもらえないんです…」
弊社
「え!?」
「広告費用を捻出している広告主である御社が、その投資した結果を見れないのですか?」
「しかも、かなり時間が経過していますよね?」
「広告用のWebページは御社資産ですよね?」
「現状をオカシイと思いませんか?」
嘘のような話ですが、実話です。
クライアントは疑問に思っていたようですが、「これが普通なのだろう」と思い込んでしまい、いつの間にか放置してしまったそうです。
クライアントを通して、数値共有してもらえない理由を代理店に確認して頂いたところ、そこには「盛大な広告代理店の都合」がありました。実際は何かしら前向きな意図があったのかもしれませんが、このようなケースは初めての事でした。
前章で紹介した、下記に該当しますよね。
「広告代理店やコンサル会社の都合に合わせない事」
「違和感を放置しない事」
5.終わりに
いかがでしたか?
今回は、4回シリーズの第1回目という事で、基本となる「心得」をお伝えしました。
本コラムの目的は、広告代理店を批判でもなく、読者の皆さんを脅すことがでもありません。
強調してお伝えしたいのは、
「必要最低限の知識を習得しましょう」
「自分軸・自分事で主導権を握りましょう」という事です。
それは、他でもない、広告主である「御社」のためです。
Webマーケティングの世界は「甘い言葉」や「業界常識っぽいコト」で溢れており、広告主の判断を鈍らせます。
第2~4回では、「御社」が『アリ地獄』にハマらないよう、参考となる事例を紹介します。
事例には「前提条件・付帯条件」がある、という事をしっかりと念頭に置いて、一つ一つ確認していきましょう。
※コラム:【失敗事例】こんな広告主はヤバい②~「評価指標」の設定が甘い~